スマート製品とは?|その製品群と使われている技術を解説

最近巷でよく聞く「スマート~」という製品はどのように生まれたのでしょうか?本稿では、スマート製品について解説し、スマート製品の具体例やそこで用いられている技術の紹介をいたします。
スマート製品とは
スマート製品とは「名前に『スマート』を冠する電化製品」です。
これらスマート製品に共通するのは、インターネットやプロセッサなど、「2000年代以降に民間にも普及した技術群」を用いて、「従来から存在する製品に新たな付加価値を生み出したこと」と言えるでしょう。明確な定義の存在する言葉ではありません。
「スマート」が持つ独立したイメージ
スマート製品の「スマート」は、英語の"smart"に由来します。
しかし、日本で使われる「スマート」の意味は、"smart"が元々持っている「賢い」、「機敏な」、「活発な」等の意味に留まりません。ここには、スマート製品という概念の出自が関係していると考えられます。
スマート製品が世に表れ始めたのは、スマートフォン、特に「iPhone」からでしょう。スマートフォンは携帯電話という枠に留まらず、自由なインターネット接続と、使いやすいインターフェイスを形にしました。さらに、iPhoneは極力ボタンを減らしたシンプルなデザインも高く評価されています。
これ以後、他社製スマートフォンだけでなく、「スマート~」という製品が世に表れ始めました。それらの製品はiPhoneが持つ、「スタイリッシュなデザイン」、「シンプルで使いやすい」、「最新技術(特にインターネット)を取り入れている」などのイメージを共有しています。
ゆえに、スマート製品においては、技術的な中身と同程度に、「デザイン」や「使用感」が重視されるようになりました。
IoTとの比較
IoTとは Internet of Things の略で、モノとインターネットを結びつけ、新たな価値を創造する試みです。
「モノとインターネットを結びつける」という点において、スマート製品と、IoT製品は同じものを指しています。では、違うところはどこなのでしょうか?
第1に、スマート製品は「従来製品をスマートにアップデートしたもの」を指すことが多いのに対し、IoTはここ10年で表れた新しい概念です。ほとんどの場合において、スマート製品には元となる何らかの従来製品が存在します。
第2に、スマート製品はインターネットやセンサの利用を必ずしも前提としていません。一方で、IoTにおいて、インターネットやセンサ技術は欠かせない構成要素です。
第3に、スマート製品の持つスタイリッシュさや使いやすさは多分に一般消費者を意識したものですが、IoTは主として社会インフラや企業の合理化・効率化を志向しています。
技術的な中身は似通っているものの、その目的や対象とするユーザーにいくつかの違いが見られます。
スマート製品の例
スマート製品という言葉には明確な定義があるわけではないため、スマート製品を正しく理解するためには、実際に存在するスマート製品を見てみるべきでしょう。
以下では、様々なスマート製品を紹介します。
スマートフォン
従来機能:通話
新たな価値:インターネット接続、直感的操作
スマートフォンは「携帯電話」を原型とするスマート製品です。それまでにも部分的に実装されていた「インターネット接続機能」や「タッチパネル」を統合し、使いやすさとシンプルさを実現しました。スマートフォンが普及することで、屋外で誰でもインターネットに接続できるようになり、現在では1人1台所有することが当たり前になっています。スマートフォンは最も広く普及したスマート製品と言えるでしょう。
スマートウォッチ
従来機能:時計
新たな価値:インターネット接続、ヘルスケア、アプリ、
スマートフォンから派生した製品としては、「スマートウォッチ」が挙げられます。こちらは時計を原型とし、「所有する(have)」のではなく、「身に着ける(wear)」ことができる製品で、ウェアラブルとも言われます。スマートフォンより軽量で、電子機器を運搬するストレスを軽減します。
スマートフォン同様、スマートウォッチの機能も多岐に渡り、アプリをインストールすることで、電子決済や音楽再生も可能です。
リストバンド等で人体に直接接触するという性質から、脈拍・体温・生活リズムなどを記録し、健康増進に役立てる、というヘルスケアとしての用途が一般的です。
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スマートグラス
従来機能:視力補正、アクセサリ
新たな価値:ハンズフリー情報表示
スマートグラスは、眼鏡にディスプレイや無線通信機などを搭載したスマート製品です。ガラス部分に情報を表示させ、文字・映像を見ることが出来ます。スマートグラスは眼鏡と同様に頭部にかけるので、両手がふさがっていても使うことができます。
工場などの作業者への作業方法や手順の指示、上長への報告など産業でも活躍をしています。
競泳選手が自身のタイムやフォームを随時確認できるゴーグル「スマートゴーグル」へと構想が広がっています。
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スマートロック
従来機能:施錠・開錠
新たな価値:遠隔状態確認、鍵紛失防止
外出時に「家の鍵をかけたか」と不安になるのは皆さんの共通の悩みだと思いますが、「スマートロック」はオートロック機能で施錠忘れを無くしたり、施錠・開錠の履歴確認でこのような悩みを解決してくれます。
スマートロックは、タイプにもよりますが、鍵をかざすだけで開閉制御ができ、ハンズフリーで行き来ができたり、鍵となるURLの発行をする事で、鍵の紛失防止や複製防止ができたりします。
また、鍵となる物もスマートフォンやICカード、リモコンキー、指紋認証やテンキーなど様々な物がカギとなっています。
スマートタグ
従来機能:情報の可視化
新たな価値:位置情報記録、追跡
スマートタグはキーホルダー、カード、シールなどの形態がありますが、機能としてはどれも無線通信機能と記録機能を有し、タグ位置の照会や、タグが移動した経路を記録することができます。
スマートフォンやノートパソコン、財布、カバンなどに取り付ければ、離れた場合の通知や、紛失した際に同サービスを利用している人と情報同期する事で位置の特定が可能となります。
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スマートスピーカー
従来機能:電気信号→音声への変換
新たな価値:音声操作、家具との連動
スマートスピーカーは「スピーカー」と銘打っていますがオーディオ機能は全体の一部分でしかありません。Amazonは自社のスマートスピーカーを「AIによる音声認識サービス」と謳っており、最も重要な機能は「音声認識」の部分だと分かります。
スマートスピーカーは、音声認識により人間と機械の間を取り持つ存在です。音声で命令を受け取ったスマートスピーカーは他のスマート製品(後述のスマートプラグなど)にその命令を伝え、スマート製品の遠隔操作を可能とします。
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スマートプラグ
従来機能:通電
新たな価値:遠隔操作、電子管理
スマートプラグはコンセントをスマート化した製品で、上述しているスマートスピーカーと連携させる事で音声操作を可能にします。
スマートプラグは電源のON/OFFをする事しかできませんが、アプリでプログラムを設定する事で、自動化することも可能です。
また、家電の使用状況をモニタリングできるので、消し忘れ防止にもなり、節電対策にもなります。
スマート製品に用いられる技術
スマート製品を支えるのは、近年登場した様々な技術です。これら技術が従来から存在した製品と結びつくことでスマート製品が生まれました。
以下では、スマート製品に関係の深い技術と、その技術がどのようにスマート製品を支えているのかについて解説します。
インターネット
個々で価値を持っていた前世紀の製品に対し、近年の、特にスマート製品が持つ価値とは「他のシステムとの繋がり」に宿ります。人とモノ、またはモノとモノの繋がりを支える技術。それがインターネットです。
インターネットによって、それぞれのモノが持つ情報は外部と共有され、共有された情報が新たな価値を創出するようになりました。
無線通信技術
モノをインターネットに接続する方法には有線と無線の2種類がありますが、使いやすさを考えると、ユーザーに近い製品では無線通信の優位性が増します。誰でも(どんなモノでも)気軽にインターネットに接続できるのは無線通信技術が発達したおかげです。
無線通信は、モノとインターネットを繋ぐ場合だけでなく、モノとモノを繋ぐ場合にも使われます。
より大きな容量の情報を、正確かつ迅速に伝達するため、無線通信技術は今も進化し続けています。
CPU(プロセッサ)
スマート製品は無線通信や情報の管理を行う上で、従来よりも大きな情報処理能力を必要とするため、ほとんどがCPUを搭載しています。情報処理能力を持つ機械をコンピュータと呼ぶならば、スマート製品は従来製品とコンピュータを合体させたもの、と考えることもできるでしょう。
CPUを製品ごとに搭載できるようになったのは、度重なる技術革新で、CPUの価格が下がり続けているためです。そのため、現在のように、ひとたび半導体が不足すると、あらゆる製品の供給が滞ってしまいます。
AI
AIを含むソフトウェア技術の発展もスマート製品には欠かせないものとなりました。スマート製品においてAIが特に大きな力を発揮するのは、「音声認識」です。
ユーザーから採取した膨大な発話データを取り込み、AIに学習させることで、音声認識の精度はここ10年で格段に成長しています。AIが搭載されたスマートスピーカーは、各使用者の発話の特徴を捉え、最適化された音声認識機能に調整されていく、という機能を有します。
電池
製品にCPUや無線通信機器を搭載するということは電源が必要となるということですが、有線で電源に繋がれた状態では使用できる領域が制限されます。
そこで必要になるのが電池です。近年の技術開発で電池サイズは大幅に縮小されましたが、未だ課題は多く、電池サイズがスマート製品の技術的な足かせになる場合も多く存在します。
ディスプレイ
ブラウン管の時代には50cmを超えていたディスプレイの厚さは、液晶や有機ELにシフトする中で薄型化していき、現在では眼鏡やゴーグルの内側に搭載できるまでになりました。
センサ
スマート製品が自身の周囲環境を観測するために必要となるのがセンサです。
スマートロックにおける施錠状態確認、スマートスピーカーにおける音声認識、スマートウォッチにおける脈拍計測など、様々な場面で活用されています。
まとめ
改めてスマート製品に使われる技術を見てみれば、今では当たり前となっている技術ばかりです。インターネットなどは、それが無かった昔を思い出すことの方が難しい、という方も多いのではないでしょうか。技術の進歩により、最新技術が日々陳腐化していることが感じられます。
今はまだスマート製品という言葉が存在できていますが、これから徐々に、私たちの日常生活にスマート製品が充満していけば、それはスマートでも何でもなく、当たり前になっていくのでしょう。